「〈ものまね〉の歴史‐仏教・笑い・芸能」を読んで

 歴史文化ライブラリー「〈ものまね〉の歴史‐仏教・笑い・芸能」石井公成/吉川弘文堂を読みました。

 私の好きなテーマ別歴史本であります。

 日本人はものまねが大好きです、それは今に始まったわけではなく昔からなのです。

 歌舞伎の見栄、とりわけ元禄見得は仏像の仁王様のものまねが起源と言うことからお話は始まります〔これだけでも驚き〕。

 最初にアジア諸国の「ものまね」について・・・インド・中国・韓国のものまねについて。

 続いて本題でもあるにほんの「ものまね」について・・・「古代日本」「ものまねの独立と寺院芸能」「ものまねから能・狂言」「花開く江戸の歌舞伎と声色」「拡張していくものまね」「ものまねの近代化」「変化と伝統」と過去から現在に辿っていく構成となっています。

 やはり江戸時代が大きい地位を占めていますね、歌舞伎に落語、声色本、百面相、ものまね興行・・・江戸時代の文化の豊かさがよく判ります。

 明治以降の江戸屋子猫、古川ロッパ柳家三亀松、むあきれたぼういずについても書かれています。

 「ものまね」がいかに日本文化の中で重要な位置を占めているかよく判る上、それぞれの小さな事でも興味深い事が多数書かれている良書です。

 

 今年初めてのブログの更新であります。

 本年も宜しくお願いします。

「ミラクル エッシャー」展に行ってきた

 昨日〔12月22日〕に大阪あべのハルカス美術館で開催されている「生誕120年イスラエル博物館所蔵ミラクル エッシャー」展に行ってきました

www.escher.jp

 エッシャーと言えば「だまし絵」ですが、それだけで無いのが今回の展覧会の特色であります。もちろん有名な「だまし絵」や「メタモルフォーゼ」作品も多数あります。

 聖書をテーマにした作品や人物画、イタリアを中心とした風景版画が多数。特に風景版画は「だまし絵」の素材となるような作品が多く見られます、その一つ一つが非常に細かく描かれ見事に版画となっているのは見物です。

 風景版画のためのチョークで描かれた習作の色合いが見事で、これをカラー刷りで版画にした方が良いのではないかと思うぐらいです。エッシャーの版画は基本的には白黒作品〔一部赤が入ったものもあり〕なので、このチョークで描かれた習作がとても目立っています〔他のカラーの習作が見たくなります〕。

 メタモルフォーゼ作品では大作品〔192×3875〕である「メタモルフォーゼ2」が展示されているところが見所ですね。

 球面に反射したり映り込んだ絵を細かく描き混んでいる作品も注目ポイントですね。

 代表的な作品から見たことも無い作品まで152点も展示されているので見応え十分です〔一つ一つの作品の作り込みも凄いです〕。

 良い展覧会でした。

「バナナの皮はなぜすべるのか?」を読んだ

 「バナナの皮はなぜすべるのか?」黒木夏美/ちくま文庫を読み終わりました。

 古典的ギャグの代名詞「バナナの皮すべり」の起源は?という人類の根源的な問題について解き明かそうとした本であります。

 こういう事を真面目に研究した本、大好きであります。

 「バナナの皮すべり」、この一つの古典的ギャグから「笑いの根源」「日本でいつからバナナが普及したか」「バナナ共和国」「世界に広がるバナナの皮ギャグ」「お約束ギャグとは」「バナナの皮と日本文学〔俳句や短歌も含む〕」「戦前日本のバナナの皮」「アメリカ喜劇」そして本題である「バナナの皮がギャグになるまで」〔昔、欧米では果物の皮があちこちに捨てられていて実際に転ぶ人が大勢いた・・・詳しく知りたい方は読んでください〕」「バナナの皮を捨てたらどんな罪」「実際に起きたパナなの皮での転倒事故」「実際に試してみた」と話は広がります。

 知的好奇心が刺激されます、読んでいて知的好奇心がワクワクします。

 解説でパオロ・マッツァリーノ氏が「文化史研究の本は売れない」と書いていますが私は大好きであります。昨日も「見世物」のほんを買いました、前には「落とし紙以前」というトイレットペーパーが普及する前にどんなものでお尻を拭いていたか書いた本や人車鉄道の本も買いました。路上観察学の本を買い込んだ時期もありましたね。

 「すぐに役立つHow to本」とは対極の位置に存在する本ですけど、こんな本を読めるって幸せなことですよね。

 

 変な連中が「アレは駄目これは駄目」「みんなが楽しめる作品じゃないと駄目」と訴えすぎて表現が制限される世界なんかまっぴらです。

「世界の艦船増刊日本海軍特務艦船史」を買ってきた

 「世界の艦船2018年12月号増刊 日本海軍特務艦船史」を買ってきました。

 「世界の艦船日本海軍◎◎史」シリーズ2周目の最終刊?〔?を付けた理由は後で書きます〕です。前巻が出たのは1997年、21年振りの改訂版です。21年前には特務艦船なんてごく一部のマニアしか興味を持っていなかったのですが〔艦船自体があまり人気が無かった〕艦これ等のおかげで「間宮」「伊良湖」「速吸」が有名になり特務艦船自体に注目が集まるようになりました・・・まさか「間宮」や「速吸」のキットが出る時代になるとは〔砲艦のキットが出たてのにはもっと驚いたが・・・昔、フルスクラッチで作ってあまりに出来が悪いので処分した〕、という時代になってからの改訂版の発売です〔「世界の艦船」編集部は艦これには関わらないといつか書いてありましたが〕。

 さて内容はいつもの「世界の艦船増刊」パターンで簡単な艦の解説と同型艦の一覧、要目表、側面図、写真が1枚から数枚、写真も無い艦もありますからね〔給油艦速吸など〕となっています。

 「特務艦艇」〔工作艦給油艦など〕

 「潜水母艦/敷設艦

 「砲艦/輸送艦

 「明治の水雷艇/通報艦

の4つに分別。折り込み図面は給糧艦伊良湖」〔昭和16年〕の艦内側面と第2甲板平面図面。

 後半は「日本海軍特務艦船史話」として11の文章

 「推進機関から見た昭和の特務艦」

 「魚雷艇建造の隘路となったエンジン」

 「日本海軍の洋上給油法」

 「戦前の給油艦 その任務と航海」

 「平時の運送艦はトランパーだった?」

 「「宗谷」の太平洋戦争」

 「艦隊の人気者 給糧艦「間宮」」

 「工作艦「明石」の能力」

 「標的艦の実務」

 「砕氷艦「大泊」の活躍」

 「電纜敷設艇の具体的な用途は?」

となっております。

 いつもの良くも悪くも「世界の艦船増刊」でしたね。

 

 さてさて「世界の艦船増刊日本海軍◎◎史」の2周目はたぶん完結。次は何が出るのか考えてみると・・・最有力は

 「アメリカ海軍空母史」「イギリス海軍空母史」・・・両海軍とも新型空母が就役しましたからね、でも本誌で毎年「世界の空母」の特集してるからね〔2年で一回で良いと思う〕。

 個人的に出して欲しいのは

 「日本海軍特設艦艇史」・・・私がまだ完結と書かなかったのは海軍の縁の下の力持ちで多大な損害を被った特設艦艇を特集した本が無いこと、大は特設巡洋艦特設水上機母艦、小は特設哨戒艇まで一冊にまとめて欲しいな。

 「日本客船史」・・・「世界のクルーズ客船」は数年に一回、増刊が出てるのに日本の客船をまとめていないとは・・・「回想の日本客船」を本誌で連載していたので一冊にまとめて今活躍している飛鳥Ⅱなどを追加すると出来ると思いますが。

 「〔日米英独仏伊をのぞく〕第二次大戦艦艇史」・・・戦艦や巡洋艦を持っていた海軍もありますし「艦これ」ではスウェーデン海軍航空巡洋艦ゴトランドが実装される時代ですからね、中小海軍の世界も知りたいですね〔Jane's Fighting Ships of WWⅡがありますが洋書ですからね・・・1989年発売と古いですし〕。

 後は傑作軍艦アーカイブ・シリーズの新刊予想を

 1冊まるまる特集が出来そうな艦艇は

 日本海軍・・・「扶桑/伊勢型戦艦」「最上/利根型巡洋艦」「空母蒼龍/飛龍/雲竜型」「空母赤城/加賀」「翔鶴型空母」「特型駆逐艦

 アメリカ海軍・・・「ヨークタウン型空母」「エセックス型空母」「ニミッツ型空母」「フレッチャー型駆逐艦」等々、山ほどある

 ドイツ海軍・・・「ビスマルク型潜水艦」「シャルンホルスト巡洋戦艦/ポケット戦艦」「Uボート〔過去に増刊「第二次大戦中のUボート」〕

 イギリス海軍・・・「ネルソン型戦艦」等

 ぐらいですかね。

 ちなみに次の世界の艦船増刊は毎年恒例「アメリカ海軍2019」で12月17日発売です。

「昭和40年男2018年12月号特集俺たち即席メン世代」を買ってきた

「昭和40年男2018年12月号特集俺たち即席メン世代‐インスタントジェネレーション」を昨日買って参りました。

 第1特集は「俺たち即席メン世代」であります。

 「この本を読んでいる世代は即席メンと歩んだ世代」という特集最初の言葉。

 即席メン30年の歴史年表には懐かしい即席メンがずらり、最近見ないものもある。

 もちろん「チキンラーメン」の話が最初。

 「サッポロ一番」「明星チャルメラ」「出前一丁」が袋麺三大スターとして解説。

 カップヌードルの今までに発売された種類の多さに驚く。

 「あかいきつねvsどん兵衛」「U.F.O.vsペヤング」、私はU.F.O.が好きなんです。

 「ルパン三世カリオストロの城」で食べられた国産カップ麺のお話も、よく考えたらカリオストロ公告なんだから日本製の方が貴重なんでは無いかと〔作品が作られた当時〕。

 しかし即席メンの種類の多さに驚く限り、地方限定品なんて知らないのばかり。

 「白熱のCM合戦」・・・インパクトの強いCMが多かったですよね。「戦車が怖くて赤いきつねが食えるか!」のインパクト強し、「わかめ好き好き〜」は耳について離れなかった、斉藤由貴の「誘惑してもいいんですか?」が一番のお気に入り。

 「懐かしい即席自販機の世界」・・・昔はインターチェンジなんかによくありましたよね、最近では絶滅危惧マシンとして人気、本も出てますよね〔私も1冊買った〕。

 「インスタント大図鑑」・・・粉末ジュース懐かしい、フルーチェもよく作った。

 「即席メンのCMソング」・・・名曲揃い。私が好きなのは斉藤由貴の「卒業」と中村あゆみの「翼の折れたエンジェル」〔ここに出てないけど鈴木さえ子の「'84 日清チキンラーメンCMソング」も好き〕

 

 後半の特集は昭和54年、江川と小林のトレードがあった年ですね。

「プロレスファンの夢が実現した8・26夢のオールスター戦」・・・伝説のBI砲〔馬場と猪木のタッグ〕復活で話題になった試合なんだがテレビ中継無しだったので記憶が薄い〔全試合の参加者と試合結果掲載・・・大仁田厚前田日明も出てたんだ〕。ファンが選んだBI砲と対戦が見たいタッグチームのランキングが面白い、トップは試合で実施されたブッチャーとシンのタッグなんだけど2位の「ザ・ファンクス」や3位の「鶴田・藤波」組も見たかったな・・・東スポが仕掛けていたのね。

 「NECPC-8001を発売」・・・憧れのマシンでしたね、買えませんでした。本体価格16万8000円〔中学生に出せる額じゃありません〕、5インチのフロッピーディスクドライブが31万ですよ・・・今は安いよね。我が家には従兄弟のお古であるTK-80BS_LEVEL2があったんだけど、もうポンコツでろくに使えなかったのが思い出。

 

 他の記事から

 「ヒートシュックに気をつけろ」・・・最近、血圧が高いので注意します。

 「追憶のボール・若菜嘉晴」・・・阪神時代の印象強し。

 「みうらじゅん」・・・言い生き方をしていて羨ましい。

「没後50年藤田嗣治展」に行ってきた

 11月2日に「没後50年藤田嗣治展」京都国立近代美術館に行ってきました。

foujita2018.jp

 没後50年と言うことで、あちこちで特別展が行われている藤田嗣治です。

 今年だと

没後50年 藤田嗣治 本のしごと -文字を装う絵の世界-

ta283.hatenablog.com

 2016年には

www.artm.pref.hyogo.jp

が関西では開催されていますが決定版はこちらになると思います。

 初期の自画像から始まり最晩年のカトリックがらみの作品までが時代別に展示されています。

「原風景」

「はじまりのパリ‐第一次世界大戦をはさんで」

1920年代の自画像と肖像‐「時代」をまとうひとの姿」

「「乳白色の裸婦」の時代」

「1930年代・旅する画家‐北米・中南米・アジア」

「「歴史」に直面する‐二度目の「大戦」との遭遇」

「「歴史」に直面する‐作戦記録画へ」

「戦後の20年‐東京・ニューヨーク・パリ」

カトリックへの道行き」

と分かれて展示されているので時代によっての画風の変化が判りやすくなっています、特に第二次大戦の歴史画「アッツ島玉砕」「サイパン島同胞臣節を全うす」の戦争の重さを背負った迫力と戦後のニューヨークやパリで描かれた作品達との対比〔戦後、責任を問われた話は・・・〕が印象的であります。

 もちろん第二次大戦前のパリで描かれた作品が良いのは当然であります。裸婦画がずらりと並んだコーナーは圧巻、世界各地で描かれた絵も良いです。

 100点以上の作品〔名作〕を一カ所で見られるだけで貴重な展覧会だと思います。

「ものと人間の文化史〔177〕歯」を読んだ

 「ものと人間の文化史〔177〕歯」大野粛英/法政大学出版局を読み終わりました。

 一冊〔上下・上中下に分かれることもあり〕で一つのテーマについて文化史的に解説する本。

 今回のテーマは「歯」であります。

 170冊以上出ているこのシリーズですが人体の臓器がテーマになったのは初だと思います。

 内容は

 第一章「歯が痛い」・・・歯痛治療法の歴史、縄文時代から江戸まで、加持祈祷から民間薬・漢方薬まで。

 第二章「歯を抜く」・・・抜歯について。古代人の通過儀礼のための抜歯、昔の歯の抜き方、明治になってからの西洋医学の導入による抜歯など。

 第三章「お歯黒する」・・・日本の古い風習である「お歯黒」について。起源の諸説から江戸時代、そして明治の禁令まで。

 第四章「歯をみがく」・・・歯磨きのルーツから房楊枝や歯磨き粉の歴史。

 第五章「入れ歯をつくる」・・・世界と日本の比較、精密に作られていた日本式入れ歯〔柘植の木製〕、入れ歯師、入れ歯を使った江戸有名人〔井原西鶴本居宣長など〕。

 第六章「発展する歯科医学」・・・明治からの西洋史科学の導入と歯科治療の発展について。

 第五章「入れ歯をつくる」に一番力点が置かれて書かれている気がします、江戸の入れ歯の技術の高さに関心。第四章の「お歯黒」も興味深い、西洋人には凄く嫌われていたようで・・・そりゃそうですよね現在日本人も嫌うでしょう〔私は嫌いです〕。

 大変読みやすく図版も多いので知的に楽しい一冊です。

 

 「ものと人間の文化史」シリーズを久しぶりに読みました、前に読んだのが74巻「蛸」ですからね、20年振りぐらいでしょうか。欲しいテーマの本はたくさんあったのですが予算の都合等々あり最近まで買えませんでした。最近、チェーン店でない古書店やネットで割と安く出てたりしたら買ってますし新刊で「醤油」も買っております。

 ジュンク堂茶屋町店に行くとずらりと並んでいて端から順番に欲しいのですが・・・なかなか買えませんよね

 あと初期の巻が出だしたのが1960年代後半ですからね新版が欲しいテーマもあります〔フォントも古くて読みづらいというのも・・・〕。

 今後も注目のシリーズであります。