「スポメニック‐旧ユーゴスラヴィアの巨大建造物」ドナルド・ニービル著/グラフィック社を読み終わった

「スポメニック‐旧ユーゴスラヴィアの巨大建造物」ドナルド・ニービル著/グラフィック社を読み終わったので感想を書きたいと思います。

 スポメニックとは旧ユーゴスラヴィアで作られた記念碑です。大戦後、産声を上げたばかりのユーゴスラヴィアは多くの国、言語、民族からなる国家でした。ユーゴスラヴィアの理想となる「同胞愛と統一」の基礎構築を助けるために共産党が採用したのがスポメニックという記念碑と記念空間でした。

 と言う訳でユーゴスラヴィア中に記念碑が建てられ、それを1冊にまとめたのがこの本です。各スポメニックごとに名称・場所・完成年・デザイナー・サイズ・素材・歴史・デザインと建築・位置づけと状態についてまとめられています。

 各スポメニックの元になる〔作られた起源〕を読むとユーゴスラヴィアの大戦中の苛烈な歴史が判ります〔この本ではこれがメインじゃ無いかと言うほど詳しく書かれています〕。枢軸国とパルチザンが地域の取り合い、それも一度じゃなくて二度、三度と取られたり取り返したり、そのたびに多くの犠牲者が出ています。その勝利や犠牲者の追悼の記念碑がスポメニックです。

 さらに悲劇は1990年代に起こったユーゴスラヴィア内戦、これで多くのスポメニックが壊され荒れるがままに放置されてしまうことになります、一部のスポメニックだけが今でも手入れされています。

 スポメニック自体は巨大で抽象的な建造物となっています。あえて抽象的な形にしていると思われます。よくぞ、これだけ大きな建造物を国内に多数作ったものだと思います。それほどまでに国の統一を目指したかったのでしょう〔しかしチトーの死後、崩壊してしまう〕。

 巻の帯に「歴史が生んだ、ディストピア世界」とありますが、まさにその通りです。

 変な建築目当てに買った本ですがユーゴスラヴィアの歴史の一端を知ることが出来ました。もちろん変な建造物が多数見られたのも良かったですが・・・歴史の方が重かった。