「第二次大戦残存艦艇の戦後‐生き残った150隻の行方」大内建二著を読み終わった

「第二次大戦残存艦艇の戦後‐生き残った150隻の行方」大内建二著/光人社NF文庫を読み終わったので感想を書きたいと思います。

 刊行ペースの早い大内建二さんの作品です。

 多くの被害を出した第二次大戦の日本艦艇、なんとか生き残った艦艇達が戦後どうなっていったかを丹念に調べた1冊。

 海軍の残存艦艇は戦艦長門など極めて少数。動ける船は復員輸送に、そして海外賠償艦として米ソ英中国に〔米英への艦艇は解体〕、長門と酒匂はビキニ原子爆弾実験に、動けなくて修理が無理な艦は解体です。この辺はあっさり書かれています〔他の本にも出てますからね〕。

 続いて陸軍上陸船、特設艦艇、陸軍徴用船、民間運用船で生き残った船艇の紹介、ここからこの本の真の価値が出てきます。図面を多用して生き残った船艇の生涯、すなわち誕生から徴用とそれに伴う改造、戦後の様子、丹念に書かれています。大変よく調べられていて感心します。

 「戦後大改造された戦時標準設計船」、極限まで簡易化された戦時標準船は戦後生き残っても、そのままでは海外航路では使えませんでした。海外規格に合わせるために大改造された船の紹介です。二重底にしたり強度を確保したり外観が一変するような改造を施され戦後日本の海運の手助けをしたのです。

 「残存商船に関わる事件と損傷軍艦のその後」、オブテンノール号事件や橘丸事件などが紹介されています。この辺も興味深いです。

 今回も内容が濃い1冊でした。