「巨大艦船物語‐船の大きさで歴史はかわるのか」を読んだ

 「巨大艦船物語‐船の大きさで歴史はかわるのか」大内建二著/光人社NF文庫を読みました。

 船の歴史を船の大きさから見てみようという作品であります。

 内容は「古代・中世の船」「帆走時代の軍艦」「装甲艦・戦艦・巡洋艦」「航空母艦」「幻の巨大軍艦」「帆走時代の商船」「現代の商船」「幻の巨大商船」の8項目に分けて解説しています。

 チチカカ湖の葦で編まれた船・クフ王の船・ハトシェプスト女王の時代の帆走船から話は始まります。ガレー船の大型化、遣唐使船〔その時代にしては大きい〕、キャラック船セイラギエン、イギリス商船セント・ミッチェルなどが最初の項目で解説されています。

 帆船時代になって軍艦は大型化します、ヨーロッパでは各国が競って大型帆走軍艦を建造していきます、その頂点がイギリスの帆走軍艦ヴィクトリーと言っても過言では無いでしょう〔今でも現役艦〕。

 1800年代半ばになると強度の高い良質の鉄鋼の量産が始まり艦艇の大型化が一気に加速します。最初はフランスで建造された軍艦グロワール、それに続いてイギリスの装甲艦ワリアー、ノーザンバーランド、イギリス装甲艦イタリア・・・日本も戦艦敷島級戦艦4隻をイギリスに発注しました。

 その後に登場したのが戦艦ドレッドノート、軍艦の歴史を変えた一隻ですね。この後各国がド級戦艦、超弩級戦艦を建造することになり大艦巨砲主義が始まるのですが航空母艦の誕生により空母の時代が始まり現代まで続きます〔その頂点が原子力空母ジェラルド・R・フォード〕。

 軍艦の巨大化の話はここまでで幻の巨大軍艦のコーナー、スウェーデン帆走軍艦ヴァーサ〔完成直後の出港で帆を全部張ったら横風のあおりを受けて横倒し沈没という笑えない船〕から始まって第一次大戦・第二次大戦の未成戦艦の解説となっています〔ドイツH級戦艦等〕。

 商船も帆走からレシプロ機関、木造から鉄製に変わり大型化、人間や物資の輸送に大きな役割を果たします。特に大西洋横断航路客船の大型化・高速化が商船の大型化に拍車をかけた歴史が詳しく書かれています〔この辺の歴史はなかなか読めないので貴重です〕。

 そしてタンカー・クルーズ客船・コンテナ船の巨大化が現在進行形、超巨大クルーズ客船のオアシス・オブ・ザ・シーズ総トン数は22万トンを超え、この船の救命艇がコロンブスが乗り込んだサンタマリア号の大きさがあまり変わらないということ自体凄い話です。最後に計画だけで終わった客船の解説です。

 

 数千年ある船の歴史で艦船の巨大化はここ百数十年のこと、良質の鉄が大量に作られるようになったことや帆走からレシプロ機関に動力が変わったことが艦船の巨大化に大きな役割を果たした事がよく判る一冊であります。

 図面多数〔文庫本なので多少荒いですが船のだいたいの見た目が判るので十分〕。

 読みやすい一冊です。

 

 ちなみに私の子供の頃〔艦船マニアになった頃でまったくもって詳しくなかった頃〕は一番大きな軍艦は原子力空母エンタープライズと新型原子力空母ニミッツ、その次が沈んでしまった大和・武蔵という感じで超巨大タンカーが次々作られ始めた頃でしたね。自衛隊は「ひえい」「はるな」が大きな護衛艦でミサイル搭載艦もほとんど無かった頃でした〔今は「いずも」級がありますものね・・・隔世の感ありです〕。それより生きている内に「艦船ブーム」が来るとは思いませんでした。