「ほんとうの花を見せにきた」桜庭一樹を読んだ

 「ほんとうの花を見せにきた」桜庭一樹著/文春文庫を読み終わった。

 私は吸血鬼物がフィクションもノンフィクション〔民俗学・史学〕も好きなのだがフィクションで「当たり」というのは案外無かったりする。しかし、この作品は違う。久しぶりに当たりを引いた気がする。さすが桜庭一樹さんの作品、「ハヤカワ文庫版ブルースカイ」から読んでいた甲斐があった。

 中国の山奥からやってきた吸血鬼族「バンブー」と日本〔と思われる〕の人間との関わりを大河ドラマのような時の流れの中で紡いでいく青春小説。

 まず中国の山奥から吸血鬼族がやってくるという設定が独創的、日本の近未来といえる舞台設定も面白い〔桜庭一樹さんの作品には時折ある〕。若い姿のまま年を取らないけど寿命がある、そして最後は〔ここはネタバレになるので書きません〕という設定も斬新。これだけの設定をそろえただけで今までに無いような吸血鬼作品になるのは確定したようなものです。

 色々な残酷な事件も起こるけど読み終わってみれば「良かった」と思う展開であります。

 内容は「ちいさな焦げた顔」「ほんとうの花を見せにきた」「あなたが未来の国に行く」の三つのお話から出来ています、その三つのお話が時を超えてリンクして全体の話が成立します。吸血鬼に比べて短い上に年とともに容姿が変わる人間と人間と比べて寿命も長く年も取らない吸血鬼の関わり合い、吸血鬼族の掟とそのわけ・・・ラストに見事に繋がります〔ネタバレせずに書くのは難しいですね〕。

 中国の文化大革命なんかも出てきて驚いたりします〔筋に関わってます〕。

 

 本当に面白かったです。

 当たりでした。

「八画文化会館VOL.6レトロピア岐阜」を買いました

 「八画文化会館VOL.6レトロピア岐阜」八画出版部を買いました。

 1年ぶりの新刊であります。

 今回はまるまる一冊「岐阜」特集です、岐阜以外は特別随筆「風俗マンションに住んだ男のその後と山谷住まい」だけです。

 関西に住んでいて旅行にもほとんど行かない私にとって「岐阜」はあまりになじみがありませんでしたが、こんな濃い場所とは〔「濃い場所」ばかり集めた本なんですけど〕。

 歌で有名な柳ヶ瀬商店街〔「柳ヶ瀬ブルース」が流行ったのも大昔ですが〕が歌のイメージのような感覚でいまだに存在しているとは思いませんでした、

 遊郭跡や「女の園」も味わい深い古さ、岐阜レトロミュージアムのパチンコやオートレストラン〔うどんやラーメンの自販機〕も良い。

 繊維街の「ハルピン街」も昭和臭が漂っています〔こんなところが有る事すら知らなかった〕、陶器街も鉱山街・神岡も団地も・・・時代が止まったまんまの場所がこんなにあるなんて・・・凄いところだ。

 毎号載っている、とても濃い「ローカル三行はみだし情報」も岐阜の市町村別でまとめられてます〔出来れば全国編“も”乗せて欲しかった〕

 最後のミステリーパトロールも「岐阜」・・・岐阜ってここまで濃かったんだ、と思える一冊。今回も読み応えがあったな。

 

 さて、この号から本の入手が今まで以上に困難になりました、基本的に「本は本屋で手に取って見てから買う」を信条としているので大型書店をあちこち、前に売っていたジュンク堂三宮店に無く、仕方ないからネット通販で買おうかと思ったらジュンク堂の大阪茶町店にありました・・・良かった。手に取って見るとISBNコードが無いですね・・・店員さんがレジ入力するときに大変そうでした。

 裏表紙に「忘れないでください」と書いてあって涙。私はそう簡単に忘れませんよ。

 「ワンダーJAPAN」の定期発刊がなくなって久しい今〔ラジオライフで毎月数ページじゃ寂しい〕、この手の本は貴重です。頑張って発行してください・・・期待しています。

「チャペック兄弟と子どもの世界」展に行ってきた

 芦屋市立美術博物館「チャペック兄弟と子どもの世界展」に8月15日に行ってきました。

ashiya-museum.jp

 チャペック兄弟は造形作家で兄のヨゼフ・チャペックと作家で弟のカレル・チャペック。特に弟のカレル・チャペックは「R.U.R.〔邦題「ロボット」〕で「ロボット」という言葉を世界に送り出した人であります。

 私も「ロボット」や「山椒魚戦争」を読んでカレル・チャペックに興味を持ち、この展覧会に行ってきました。

 今回の展覧会はチャペック兄弟が生み出した子ども向け作品の展示がメインであります。

 展示は大きく5に区分されています。「子どものモチーフ」「おとぎ話」「いぬとねこ」「さまざまな仕事」「子どもの視点」ですが絵本の原画が中心です。

 本好き〔活字中毒と言った方が適切〕の私は、例外的に絵本という物を子どもの時から今までほとんど読んでません。と言うわけで絵本の挿絵として凄いか凄くないか他の絵本と比較は出来ないのですが1910〜1930年代に描かれたとは思えないほどモダンで現在でも通用するセンスを感じます。良い絵は時代が過ぎても良い絵ですね。

 絵本の好きな方には良い展覧会と思われます。

 ちなみにカレル・チャペックの「ロボット」に関する展示は築地小劇場での日本初公演のポスターのみでした、今度は「チャペック兄弟と大人の世界」もしくは「チャペック兄弟とSFの世界」展を公開して欲しいですね。

 

 さてさて芦屋市立美術博物館、ちょっとくたびれ気味あちこち痛んでいて残念。

 それからJR・阪神・阪急からバスで芦屋市立美術博物館に行くときは要注意、路線が複雑なので乗り間違えると変なところに行ってしまいます。

世界の艦船増刊「傑作軍艦アーカイブ〔6〕英戦艦「キング・ジョージ5世」級」を買ってきた

 昨日「世界の艦船2018年9月号増刊傑作軍艦アーカイブ〔6〕英戦艦「キング・ジョージ5世」級」海人社を買ってきました。

 英国の軍艦の一つのクラスをまるごと1冊で特集した日本語の本ということ自体が大変珍しい〔過去にあったか記憶が無いぐらい珍しい〕。

 キング・ジョージ5世級は5隻。すなわち

 キング・ジョージ5世

 プリンス・オブ・ウェールズ〔マレー沖で日本海軍陸上攻撃隊に撃沈されたことで有名〕

 デューク・オブ・ヨーク

 アンソン

 ハウ

の5隻であります。

 それでは内容の紹介を。

 巻頭はカラーイラスト続いてカラー写真が4枚、タミヤの「プリンス・オブ・ウェールズ」の模型作例〔ここまでカラー〕。

 その後は5隻それぞれの写真がたっぷり、日頃英海軍戦艦の写真をあまり見ることが出来ないので貴重、特に細部の写真は見たことのないものだらけで水偵格納庫近辺や艦内部の写真は超貴重。

 続いて本文、最初は1/700タミヤプリンス・オブ・ウェールズ」の作例解説と「キング・ジョージ5世級」キットの解説。

 「開発と建造」「船体」「兵装」「機関」「戦史」「航空艤装と搭載機」「ライオン級ヴァンガード」巻尾に「キング・ジョージ5世」の新造時と第2次大戦末期の折り込み図面となっております。どの記事も図面を含めて読みがいたっぷり、知らないことも多く勉強になります。

 文頭にも書きましたが英国軍艦の日本語本は本当に貴重であります、発売してくれた海人社に感謝。次の「傑作軍艦アーカイブ」が何になるかも期待、次はビスマルク級戦艦ぐらいか?〔個人的にはシャルン・ホルスト級期待〕。

 

 この本が出たと言うことで次の艦これイベントの新艦はキング・ジョージ5級の1隻の可能性大と勝手に予想。

 

「海を渡ったニッポンの家具‐LIXILギャラリー」見てきた

 「海を渡ったニッポンの家具」LINAXギャラリー大阪を昨日〔8月13日・日曜日〕に見に行ってきました。

 

www.livingculture.lixil

 明治時代に輸出用に日本で作られた超絶技巧家具の小さな展覧会です。

 寄せ木細工の飾り箪笥、芝山細工の衝立「豊年満作図」、青貝細工〔螺鈿〕のライティングビューロー、仙台箪笥の鏡台付き箪笥が展示されています。

 どれも本当に超絶技巧です。とてつもない時間がかかりそうな作品で、とんでもない技が盛り込んであります。

 特に寄せ木細工と青貝細工は凄いレベルです、ずっと隅々まで見ていられる家具となっています。最近、色々なところで話題になったり取り上げられている明治の超絶技巧の一部を見られる良い機会だと思います。

 残念な事は会場が狭いので展示点数が少ないのと360度方向から見られない事です〔一部には後ろに鏡が置いてある作品もあります〕。無料の展覧会なのであんまり文句は言えませんが・・・。

 

 注意点・場所がグランフロント大阪南館タワーA12Fという大きなビルの商業フロアにLIXILギャラリーがあるのでHPを見ながら行く方が良いと思います。お盆休みもあるようなので要注意であります。

「昭和40年男2018年8月号特集俺たちを虜にした昭和洋楽」を買ってきた

 「昭和40年男2018年8月号特集俺たちを虜にした昭和洋楽」を発売日に買ってきました。

 第1特集は「俺たちを虜にした昭和洋楽」

 残念ながら私は洋楽をあまり聴いてきませんでした、歌詞の意味が分からない曲が苦手でして〔英語は大の苦手、そのほかの言語はもっと判りません〕。

 アバやノーランズは聞いていた事がありますが・・・マイケル・ジャクソンやマドンナの有名な曲は耳に入りましたから知っています。この特集で大きく取り上げられているようなアーティストは知ってますよ、でも詳しくない。

 「洋楽ビジュアルの伝道師・江口寿史インタビュー‐マンガの中の洋楽」・・・「ストップひばりくん!」にはいろいろ出てましたよね、懐かしいです。

 「ブラウン管の中の洋楽」・・・「プロレスラーの入場テーマ曲」これはプロレス好きなので聞いてましたね。ミル・マスカラスのテーマ曲「スカイハイ」やロード・ウォーリアーズの「アイアン・マン」はインパクト大。高校時代に洋楽好きでバンドをやっていてミリオタでアニオタで何の関わりもない私と関係なさそうな友人との接点はプロレスでしたね。

 「日本独自の帯文化」・・・これは興味深いです。

 

  第2特集は昭和52年、日本赤軍によるハイジャックや青酸カリ入りコーラ事件があった年です。

 「どっきりシール」・・・そう言えばあったなぁ〜。

 「奥寺康彦がドイツブンデスリーガに日本人初挑戦」・・・サッカー好きな友人が興奮してた、でも「奥寺一人じゃワールドカップ出場は無理だ」とも。

 「ロッキー」・・・今でもテーマ曲はよく流れます。

 「アメリカ横断ウルトラクイズ」・・・大学生になったら出ようと思っていたが大学生になったときには自分に体力と反射神経と運がない事に気付いて断念した。

 「テキサス・ブロンコ不屈の魂」・・・テリー・ファンクの記事、人気あったよね。特にザ・ファンクスvsブッチャー・シークの抗争は凄かったよね。あの頃、後になってブッチャーがあんなに人気が出るとは思わなかった。

 

 そのほかの記事から。

 「もの忘れの不都合な真実」・・・父が認知症になった私にとって「もの忘れ」は恐怖。この年になると記憶力が落ちてきて余計に恐怖。

 「HOBBY ROAD〔最終回〕トミカ」・・・懐かしいですね。トミカの出る前は舶来マッチボックスのミニカーが主流でしたね〔ちょっと高かった〕。トミカビルも持っていた・・・みんな親戚の子どもにあげちゃった、置いとけば良かったかな・・・でもよく遊んだのでボロボロだったけど。

 

 この号で「昭和40年男」も50号です。よく続いてます。

 連載の最終回が多いのが気になります。今までの経験上、連載が同時に多数終わると雑誌の雰囲気が変わったり雑誌が潰れたりして不安になるんですよね・・・今の空気が変わらない事を期待します。

「プラド美術館展」を観てきた・その2

ta283.hatenablog.com

の続きです。

 前回、紹介できなかった絵についてです。

 「王太子バルタサール・カルロス騎馬像」ディエゴ・ベラスケス・・・王太子カルロスが5〜6歳の馬上の姿、ベラスケスの名作の一つであります。幼いながらも指揮棒を手にして馬を乗りこなしております。鑑賞者が見上げる位置に掲げる事を計算して馬の胴体を太めにするなどの工夫がしてあります。いかにも良い血族の「おぼっちゃま」の言う感じが良く出ています。しかし図録によるとバルタサール・カルロスは16歳の若さで亡くなられたそうです。

 「視覚と嗅覚」ヤン・ブリューゲル〔父〕、ヘンドリク・ファン・バーレン、ヘラルト・セーヘルスら・・・合作です。画面いっぱいに額装された絵画とテーブルを囲む女性と天使〔子供?〕が描かれています。美術館かコレクション置き場か、それにしては女性と子供・・・寓意画なんだろうけど・・・博物学を寓意的に表したらこんな感じになるのかな・・・よく判らないけど気になる絵です。

 「巨大な男性頭部」ビセンテ・カルドゥーチェに帰属・・・246×205cmのキャンバスに男性の巨大な頭部の絵。「王妃の間」を守るために掲げられていて門番の代わりになっていたと言います。確かに少し横目で睨みつける眼差しはインパクト大ですね、とにかく迫力があります。

 「音楽にくつろぐヴィーナス」ティッィアーノ・ヴォチェッリオ・・・有名な女性裸体画の一つであります。女神として理想化されているわけでも神格化されているわけでもなく「人間の女性」のようにヴィーナスが描かれています。その上、ヴィーナスである事を示す伝統的な事物も無しです。オルガンを弾く男性がヴィーナスを覗き込む姿がなんとも言えません。

 「犬と肉の寓話」パウロ・デ・フォス・・・イソップ寓話からの作品。肉をくわえた犬が橋を渡っていると水面に映った自分の姿を他の犬と勘違いをし肉を奪おうとして口を開けたら肉を水面に落としてしまったというエピーソードを絵画化しています。肉を落とした犬の驚いたよう表情が良いです。

 

 今回の展覧会は図録が2種類出ています。

 公式図録2700円とミニ図録1300円です。公式図録は大判で各絵画の詳しい解説付き。ミニ図録は展示全作品が掲載されていますが解説は簡単なもの、大きさも文庫の1.5倍ぐらいですね。今回、私はミニ図録を買いました・・・大判を買うと置く場所に困るんですよね、結構買ってますから、最近はわほどのお気に入りがない限り図録は買わないようにしております・・・今回は微妙なのでミニ図録にしました。

 でも一級の油絵が揃っている展覧会なので良い展覧会でした。