「ほんとうの花を見せにきた」桜庭一樹を読んだ

 「ほんとうの花を見せにきた」桜庭一樹著/文春文庫を読み終わった。

 私は吸血鬼物がフィクションもノンフィクション〔民俗学・史学〕も好きなのだがフィクションで「当たり」というのは案外無かったりする。しかし、この作品は違う。久しぶりに当たりを引いた気がする。さすが桜庭一樹さんの作品、「ハヤカワ文庫版ブルースカイ」から読んでいた甲斐があった。

 中国の山奥からやってきた吸血鬼族「バンブー」と日本〔と思われる〕の人間との関わりを大河ドラマのような時の流れの中で紡いでいく青春小説。

 まず中国の山奥から吸血鬼族がやってくるという設定が独創的、日本の近未来といえる舞台設定も面白い〔桜庭一樹さんの作品には時折ある〕。若い姿のまま年を取らないけど寿命がある、そして最後は〔ここはネタバレになるので書きません〕という設定も斬新。これだけの設定をそろえただけで今までに無いような吸血鬼作品になるのは確定したようなものです。

 色々な残酷な事件も起こるけど読み終わってみれば「良かった」と思う展開であります。

 内容は「ちいさな焦げた顔」「ほんとうの花を見せにきた」「あなたが未来の国に行く」の三つのお話から出来ています、その三つのお話が時を超えてリンクして全体の話が成立します。吸血鬼に比べて短い上に年とともに容姿が変わる人間と人間と比べて寿命も長く年も取らない吸血鬼の関わり合い、吸血鬼族の掟とそのわけ・・・ラストに見事に繋がります〔ネタバレせずに書くのは難しいですね〕。

 中国の文化大革命なんかも出てきて驚いたりします〔筋に関わってます〕。

 

 本当に面白かったです。

 当たりでした。