「アメリカの航空母艦」平野哲雄

「アメリカの航空母艦‐日本空母とアメリカ空母:その技術的差異」平野哲雄/大日本絵画

 とんでもない本が発売された。

 第二次世界大戦に参加したアメリカ空母の徹底的技術解説書〔図版多数〕

 とにかくよく調べられてます、アメリカの空母について書かれた日本語の書籍はあんまり無かったので貴重、といういよりこれ一冊あるとたいていのことが判るレベルの本〔空母の戦記については乗ってない〕。

 「アメリカ空母は日本空母より良くできている」というのが基本コンセプト、よく言われる「日本空母にはカタパルトが無かった」と言うだけでなく技術的底力の差と学習能力の高さが違うと言うことが判ります〔ちょっと贔屓しすぎの感はあるけどアメリカ空母の実力はエセックス級以降現在までずっと世界一であるのは事実〕。

 他の本にはまず載らないだろう缶室吸気路や救命筏・揚錨機まで載っているんですから・・・。

 今日買ってきたばかりなのでもっと細かく読んでいくと色々発見できると思われます。

 唯一の欠点は大日本絵画の軍事書籍の共通点・・・値段が高いこと〔3900円+消費税〕、誰でもすぐに買えないことです〔資料的価値から考えると値段相応なんですけどね・・・買うときに勇気が要ります〕。

「喰らう読書術」荒俣宏

「喰らう読書術‐一番おもしろい本り読み方」荒俣宏ワニブックスPLUS新書

 久しぶりの荒俣宏さんの本。

 昔は出版数も多く〔月2冊ぐらい出ていた・・・100冊以上は読んでると思う〕こちらも余裕があったのでよく読んでいたが最近はあまり読んでなかった。

 荒俣さんの本業とも言える「読書」についての本。

 前半に書いてあることは大いに納得。本を読むことの利点と欠点、読書家として生きていくことの喜びと犠牲について・・・身にしみますね、やっぱり覚悟しないと駄目ですね。荒俣さんのように、これで生活できるようになった人は良いですけど・・・。

 「読書は精神の食事です、でも食わなくても死なない」・・・その通りです。

 後半は荒俣さんの読書体験からの読書の勧めなんですけど普通の人には無理だと思います。この域に達せられる人は読書家・ビブリオマニアのほんの一部です、少なくても私には無理・・・でも本が好きだから読み続けますけどね。

 

 また博物学の本でも出して欲しいと思います。

航空ファン2016年10月号

航空ファン2016年10月号」文林堂

 特集は「グローバル戦闘機F-16最新情報」・・・ベトナム戦争後開発された戦闘機としては最大の機数を誇るF-16の最新事情について、特集という割には8ページなのが不満かな。

 巻頭カラーはベルギー・フロレンヌ基地で開催された航空ショーと毎年恒例インターナショナル・エアー・タトゥー、派手なスペシャルマーキング機が多くて華やか。

 続いてはポーランド空軍戦闘機の空撮、F-16にMiG-29、Su-22が並んで飛ぶ姿は良い。ファーンボロ航空ショーは盛り上がりに欠けた模様。

 世界一周に成功した「ソーラーインパルス」と三菱MRJの記事は毎月丁寧。

 中国軍用無人機の種類・・・なかなか見られません。

 後半はいつもと同じ。

 最後の方に次の「世界の傑作機」の予告・・・遂にフォッケウルフFw200が登場、ソードフィッシュに続いて個人的に嬉しいセレクトです。頑張れ「世界の傑作機」。

「帝都妖怪新聞」湯本豪一

「帝都妖怪新聞」湯本豪一/角川ソフィア文庫

 妖怪のたぐいが流行ったのは江戸、文明開化の明治時代には非科学的想像の物産としての妖怪なんか絶滅すると思ったら大間違いでした。

 明治になってから新しいメディア「新聞」が一気に全国に広まると同時に妖怪や怪物や魑魅魍魎、変な噂が地方から全国ネットに拡散はしたのです〔瓦版は江戸時代からありましたけど規模が小さかった〕。

 その上、海外からも色々な情報が入ってくるいう新しい展開も〔江戸時代にも少しは入ってきたんですけどね〕

 その変なお話を丁寧に拾い上げてまとめたのがこの本です。

 トンデモ話が満載で面白い一冊、元記事も現代語訳されているので読みやすいです〔当時の新聞に載っていた図版も収録〕。

「始皇帝と大兵馬俑」国立国際美術館

始皇帝と大兵馬俑国立国際美術館

 昨日行ってまいりました。

 大阪中之島にある国立国際美術館に行くのは初めてです。

 中之島は大阪のビジネス街の真ん中にあるのでお盆はガラガラですが美術館の中は混んでました〔並ばないといけないレベルではありませんでしたが〕。

 見た感想は「やっぱり古代中国は凄い」、なにしろ今から2200年以上前にこれだけのものを作ったかと思うだけで凄いです。

 最初の方の展示は秦王朝がまだ地方の小さな国だった頃の異物、中国の中心部からも周辺の遊牧民の影響も両方受けていることがよく判ります。

 秦王朝統一後の最初の大仕事は度量衡の統一、重さの基準となる「重り」や「升」が展示されています、続いてインフラ整備・・・もう水道管が整備されていたんですね。

 その後が今回のメインイベントである兵馬俑から発掘された人物像、今回展示されているのは10体、こんなものを何百何千も作ったかと思うと恐怖すら感じます。みんな細かく作ってあります、足の裏が見える射手の像は足の裏の滑り止めまで彫刻されています。

 後は銅馬車・・・これはさすがにレプリカでした、本物はさすがに持ち込めませんでしたか・・・残念。

 他にも玉や金の装身具等も展示されていて見応えありでした。

 国立国際美術館は地下構造、地下3階に特別展展示、地下2階に博物館の所蔵品、これも楽しみにしていたんです・・・今はなくなった香港の九龍城の写真は良かったですね・・・なんで九龍城を潰したんでしょう、治外法権だったからなんでしょうけど住民みんな追い出してテーマパークとしておいておけば面白かったのに・・・。

 

それにしても暑かった

「読書感想文」って必要?

 子供達は夏休みです。

 夏休みと言えば宿題、宿題で困るのが自由研究と読書感想文というのは今も昔も変わらないようです・・・私も両方とも嫌いでした。

 ネットを徘徊している下のような文書を見つけました。

小学校が読書感想文の解答マニュアル配布 「基礎教えるのに良い」「個性育たない」と賛否 - Excite Bit コネタ(1/2)

 今まで無かったのが不思議なほどです。

 いきなり「読書感想文を書きましょう」と言われても困ります。

 小学校の低学年の子供にも出される課題ですよね。

 本は課題図書があったりして選ぶ参考になるんですが〔あんまり面白そうな本が推薦されていた記憶がありません〕書き方は判りません。

 いやいや本を読まされるのも嫌ですよね・・・読んだ本が読んだ人にとって面白いとも限りませんし・・・確かに「嫌なことを我慢してする」というのも大事な学校にいるときの訓練ですけどね。

 まだ「こういう書き方がありますよ」という例があれば参考になります、社会に出て書く必要がある文書〔書類〕にはフォーマットがあって、それにそって書くことが多いです、変にオリジナリティを発揮しても問題です〔クリエイティブな仕事なら別なんでしょうけど〕。

 

 心配なのは本嫌いが「読書感想文」のせいで「本が嫌い」な子供が増えている一因じゃないかと思ってもいます、「感想文」を書くために読む本ほどつまらない読書は無いですよね・・・読んでも「つまらなかった」と思うだけの事もあるでしょうし〔特に教師が決める課題図書〕、教師が決めた課題図書の感想文で「つまらなかった」とも書くづらいでしょうし〔内申が絡んだりしたら特に・・・私は内申がない環境だったので課題図書がいかにつまらないか延々書いたことがありましたが・・・そのとき国語の先生がB判定をくれたのには驚いたな、器の大きな先生だった〕、「読書感想文」の重要な意味の一つである「本を好きになる」にはほど遠い気がします。

 逆に最近よく聞く「朝の読書運動」って言うのは良いと思います。毎朝決められた時間本を読む、読む本は自由、自分で選んで読む、感想文は書かなくて良い・・・これが大事だと、本当に良いと思ったら自発的に感想を書いたり人に勧めたりしますよ・・・今はSNSやブログもありますし。

 

 もう一つ、今の情報環境で「本を読むのは本当に必要か?」という問題。

 私は自他共に認めるビブリオマニアであり部屋には本が溢れている環境で生活していますが社会的に見て成功しているとは言えませんよ。

 「多読のススメ」という本を立ち読みしたのだが内容が薄かったですね、帯には「本を読む人と読まない人では知的格差はもちろん収入格差が生じる」なんて書いてありましたけど、嘘ですね・・・「私を見ろ!」と言いたいです。

 私は本が好きで面白いから読んでるんです・・・「偉くなりたい」なんて思ってないですよ・・・「好きなだけ本が読みたい」それだけです

 

 「読書感想文」課題やコンクールなんて要らないと思いませんか?

「犬の伊勢参り」仁科邦男

「犬の伊勢参り仁科邦男/平凡社新書

 「江戸時代の明和8年〔1771〕、犬が単独で伊勢参りを始めた」と聞いて信じる人がどれだけいるだろうか?この本はそれが事実かどうか検証するところからはじまります。調べてみると記録が出てくる出てくる、犬どころか豚や牛まで・・・。

 元々、伊勢神宮では色々な理由で犬は嫌われていたようですが〔殿上で吐いたり糞をしたり色々あったようです〕・・・ところが江戸になって「犬のお伊勢参り」が割と日常的になってしまった実態が書かれています。

 と言っても犬が自主的にお伊勢参りをしたわけではなくお伊勢参りにする人達について行き親切な旅行者や街道の人達のお世話になりながら伊勢にたどり着きお札等々をもらって帰り道も色々な人の世話になりつつ帰ったというのが真実のようです〔犬には「伊勢参り」の目印と手紙やお金がつけられていたようで、それを見た人が申し送るように連れて行ったようです〕

 この本を読んでると江戸時代の平和さの一面を感じられますね、お金やお札をぶら下げていても取られることが無かったと言うことですから〔江戸時代にも山ほど物騒な出来事はあるんですけど・・・「江戸の少年」氏家幹人等々参照〕

 とても知的好奇心を刺激する本でした。