「日本1852‐ペリー遠征計画の基礎資料」チャールズ・マックファーレンを読んで

・「日本1852‐ペリー遠征計画の基礎資料」チャールズ・マクファーレン著/渡辺惣樹訳/草思社文庫を読んで

 1853年のペリー来航の前年にアメリカ・ニューヨークで発売された「日本論」もしくは「日本資料」といえる本であります。

 著者チャールズ・マックファーレンは英国人歴史家で日本への関心を持つ多くの友人に囲まれ彼自身も日本に興味を持つようになり世界各地で著された日本の資料を蔵書していた・・・ただし日本に行ったことはない人間である。

 著者の日本に関する資料の多くは長崎出島に出入りしていたオランダ商館長・商館員・オランダに雇われた外国人〔英国人やドイツ人等・・・当時の日本人にはオランダ人と区別がついてなかったようである〕である。

 おかげで著者は当時としては多くの正しい情報を広範囲に手に入れることができたのだ〔多少の間違いや勘違いがあるのは仕方ない〕。

 著者の日本に対する評価は高い〔幕藩体制に対しての批判はある〕、同時に権力の二重構造〔皇室と将軍〕に関して何度も記述している。

 本書の前半は「日本と西洋の接触」が丁寧に書かれている。戦国時代のポルトガル人来航にザビエル等の宣教師の活動、英国人ウィリアム・アダムス〔三浦按針〕、キリスト教が禁止になった理由、ポルトガル人追放とオランダとの交易、江戸後期のイギリスやロシア船の来航まで書かれています。特に戦国から江戸初期におけるポルトガル人の活動と失敗に多くのページが割かれています。

 同時に西欧人と接触した日本人の行動についても詳しく書かれています。

 後半は日本の地理・歴史・宗教・政治体制・資源・動植物・技術・文化・娯楽等の博物学表記です。

 日本人については「礼儀正しい」「清潔好き」「知的レベルが高い」「女性の地位が高く尊重されている〔西欧では女性の地位はまだまだ低い時代〕」「宗教に寛容〔ただし政権に敵対するものはゆるされない〕」と好評価が多いが「形式主義すぎ」「前例のないことはなかなかやらない」等の指摘もある・・・今でも変わってないか・・・。

 「礼儀正しい」「清潔好き」は他の西欧人が江戸末期から明治初期に書いた本にもよく書かれている〔当時の欧米は不潔でしたからね、岩波文庫「十八世紀パリ生活誌」を読むとパリの不潔さがよくわかる〕、この本は戦国時代から1852年までの「日本と西洋の接触」について丁寧に調べて書かれているのだが戦国時代に日本について書かれた書物〔宣教師の報告等〕にも「礼儀正しい」「清潔好き」と書かれていたらしい・・・筋金入りだ思う。

 また日本とトルコの共通点をかなり上げていることが印象的です。

 

 江戸末期から明治にかけて西欧人によって書かれた本を何冊か読んだことがありますが、この本の分析力はすごいです〔著者は日本に来たことがないのですから〕。

 ペリー艦隊はこのレベルの情報を持って日本に来たことを考えると興味深いです、日本も欧米に関する情報をオランダ経由で知っていたみたいだが〔黒船が来ることもわかっていたのに、あまり手が打てなかった・・・〕この辺の情報収集力が欧米の外交力の強さですね。

 

 面白い一冊でした。