「セーラー服の誕生‐女子校制服の近代史」刑部芳則著を読み終わった

「セーラー服の誕生‐女子校制服の近代史」刑部芳則/法政大学出版局を読み終わったので感想を書きたいと思います。

 凄い本です。

 よくぞここまで調べ上げたと思います。

 セーラー服が戦前の日本の女子校でいかに広まったか調べ上げた1冊です。

 今までに世間に流布していたセーラー服に関する俗説〔最初のセーラー服の学校は?、昭和天皇即位の礼の後でセーラー服が普及した等々〕を丹念に調べた資料を元に否定し新事実を明らかにしていきます。

 学校の制服が洋装になったときにセーラー服じゃ無くてブレザータイプにしたら「バスガールや女工さんと間違えられて嫌なので学校に抗議してセーラー服にしてもらった」という学校が日本中にあって驚きます。よっぽどバスガールと一緒にされるのが嫌だったかと・・・当時、女学校に行くというのは良いところのお嬢さんがメインでしたからね。

 セーラー服の普及状態については県別に解説、よくぞ全国調べたものです。

 私の地元の兵庫県、セーラー服じゃなくてワンピース型を採用した2校〔小林聖心と神戸松蔭〕って今でも変わりなく同じ制服なんですよね、私服で有名な神戸女学院がセーラー服を採用していた時期があったことにも驚き。

 大正時代末期の服装改善運動や生徒達の希望がセーラー服の普及に大きな影響を与えたことが判ります。

 太平洋戦争の時期はやっぱり暗い空気ですね。

 戦後にどうなったかが書かれていないのは少し残念〔書いていたら分量が凄くなりそう〕。

 ここまで丁寧にセーラー服の普及について調べた本は他に無いと思われます。作者の情熱には本当に頭が下がる思いであります。

 読み応え十分の1冊でした。