「ウィーン・モダン クリムト、シーレ世紀末への道」国立国際美術館に行ってきた

「ウィーン・モダン クリムト、シーレ世紀末への道」国立国際美術館に10月19日に行ってきました。

artexhibition.jp

 この展覧会は日本とオーストリアハンガリー二重帝国が国交を結んで150周年になるのを記念して開催されたものです。

 18世紀後半から20世紀初頭までのウィーンが育んだ美術を紹介しています。

 いつものように展示各章の感想を順番に書いていきたいと思います。

 

・第1章「啓蒙主義時代のウィーン 近代社会への序章」

 まだハプスブルク帝国の首都であり宮廷都市だった頃のウィーンでの作品です。

 最初にマルティン・ファン・メイテンス「マリア・テレジア(額の装飾画に幼いヨーゼフ2世)」とハインリヒ・フリードリヒ・フェーガー「鎧姿の皇帝ヨーゼフ2世」の巨大な全身画が展示されています。当然のことながら立派ですね。

 皇帝ヨーゼフ2世の統治時代はウィーンのフリーメイソンが最も活動的な時代だったそうです。1875年頃に描かれた「ウィーンのフリーメイソンのロッジ」が展示されています、少しでも西欧オカルトをかじったことがある人間にとっては興味津々であります〔実際には、そんなにオカルトな団体じゃないんですけどね〕。「プラクター上空に浮かぶヨハン・シュトゥーヴァーの熱気球」は飛行機ファンとして興味深いです。

 ヨーゼフ2世は啓蒙主義の熱烈な支持者だったので社会改革も実施しました、その一貫として都市ウィーンの改革も実施、総合病院を作ったり皇帝狩猟地プラーターや離宮アウガルテンを誰でも使える公園にしました。その当時の都市の風景を写実した版画が展示されています。

 

・第2章「ビーターマイヤー時代のウィーン ウィーン世紀末芸術のモデル」

 ピーターマイヤーは1814/15年から1848年の時代を指します、ナポレオン戦争が終わってウイーン会議が開催された時代です。

 「会議は踊る、されど進まず」でおなじみのウィーン会議に参加したメッテルニッヒアタッシュケースが展示してあります、いかにも使い込んでます、という感じが出ています〔ちゃんと残っているんですね〕。当時のウィーンの風景画が展示されています。

 アントン・ツィーグラー「ミヒャエラープラッツのバリケード、1838年5月26−27日」はウィーン革命を代表する絵画です。

 ビクターマイヤー時代の日常生活の絵画は当時のブルジョア〔富裕市民〕の生活をよく表しています、ゴテゴテとせずすっきりとしています。

 ここでは絵だけでなく家具・銀食器・ドレスが展示されています。銀食器は今でも通用するようなシンプルなデザインです。ドレスはさすがに古い感じ。シューベルトの眼鏡も展示されいます〔特徴的〕。

 ピーターマイヤー時代になると宗教画が減り風俗画や風景画が増えてきます。

 ピーターマイヤー時代の代表的画家フェルディナント・ゲオルク・ヴァルトミュラーやルドルフ・フォン・アルトの風景画が展示されています。ヴァルトミュラーの「バラの季節」は構図が格好いいです。アルトの「ウィーン日食、1842年7月8日」も綺麗ですね。

 

・第3章「リンク通りとウィーン 新たな芸術パトロンの登場」

 フランツ・ヨーゼフ1世の治世にウィーンは都市改造を行いリンク通りが完成しました。この時代の絵などが展示されています。

 ヨーゼフ1世に招聘された「画家のプリンス」ハンス・マカルトの絵が多く展示されています。。ルドルフ・フォン・アルト「グスハウス通りのハンス・マカルトのアトリエ」が興味深いです、このアトリエはサロンであり有料観光名所でした、色々な物が置いてあって面白い。

 ウィーン万博の日本館の写真も展示されています、この日本館がのちの西欧美術に影響を与えます。

 ヨハン・シュトラウスについての展示もあり。

 

・第4章「1900年−世紀末のウィーン 近代都市ウィーンの誕生」

 ここまで来てやっと展覧会テーマである世紀末ウィーンです。

 カール・ルェーガー市長の椅子が展示されていますが、これが凄い木製の椅子に真珠母貝の象嵌が一面に施されています。

 オットー・ヴァーグナーの近代建築についての展示あり、この頃の設計図というか計画図ってとても好きです〔昔、パリのエッフェル塔の図面も見たことがありますが素敵でした〕。

 ここでクリムトの初期作品の寓意画とウィーン分離派の創設当時の作品が展示されています。ずんずん世間の知っているクリムトになっていきます〔表現が変ですが〕。有名な「パラス・アテナ」や「愛」「エミーリエ・フレーゲの肖像〔これだけ撮影可能です〕」が展示されています。素描も展示されていますが、これが良いです。作品のための習作が多いのですが、これだけで作品になるぐらい良いです。ウィーン分離派の作品も展示されています。

 「ウィーン分離派のグラフィック」に展示されている本の表紙やポスターが好きです。クリムト本人が映る写真も展示されています。

 「ウィーン工房の応用美術」の銀食器も今でも通用しそう。グラフィックも面白いです〔エゴン・シーレのが良い〕。

 そしてエゴン・シーレの作品が登場します、クリムトも癖が強いがシーレはもっと強い。簡単な鉛筆画ですら強い。

 最後に「芸術批評と革新」で第一次大戦前までの作品が展示されています。

 

 ここまでが展示内容です。

 とにかく盛りだくさんですね、見応え十分です。これで東京展示より少ないとか・・・凄いですね〔ちなみに図録も立派です・・・3000円以下だったので買いました〕。

 「世紀末への道」と言うより「ウィーン近代美術の道」と言った感じでした。

 でも展示内容が濃くて多かったので問題なしです。

 見に行って良かった。