「陸軍と厠【かわや】‐知られざる軍隊の衛生史」藤田昌雄を読んだ

 しばらく前に買ってきた「陸軍と厠【かわや】‐知られざる軍隊の衛生史」藤田昌雄著/潮書房光人新社刊を読み終わりました。  

陸軍と厠 知られざる軍隊の衛生史

陸軍と厠 知られざる軍隊の衛生史

 

  人間には必ず必要な便所〔トイレ〕が日本陸軍ではどうなっていたか?と言うことについて書かれた本であります。

 本書は2部に分かれていて前半が「民間のトイレ」、後半が「陸軍の厠」について書かれています。

  はっきり言って前半の「民間のトイレ」が大変充実しています。江戸・明治・大正・昭和前期・大東亜戦闘期におけるトイレの実態、衛生力を高めるための改良、屎尿処理と運搬、各種規則が図面と写真多数で解説されています。近代日本のトイレ発達史がよく判ります。

 後半が「陸軍の厠」、軍人さんにも当然のことながら便所〔陸軍では厠と言っていたらしい〕が必要です。多数の人間が共同生活する場所でもあるので伝染病は恐怖の対象の一つです、その予防のためにも厠の衛生を保つことは重要です。明治から終戦における厠の実態が判ります。

 台湾や満州における陸軍の便所も紹介されています。極寒の満州で設置された厠は高床式にしてあって下に凍結した屎尿が山のように地面から盛り上がった写真が載っております〔その小さな写真が本の帯に載っていて・・・〕。

 

 上にも書いたとおり、この本は近代日本トイレ史〔江戸から太平洋戦争終結まで〕と言って良い本であります。

 当時の規則などの文章が多数掲載されていますが当時のままの旧漢字カタカナ交じり文なので慣れてないと読みづらいところもあります。そこを飛ばしたとしても、ある程度の意味は理解出来るので問題ないかとは思います〔図版も多数ですから〕。

 

 軍隊だけではなく近代日本民俗学的にも大変興味深い1冊でありました。

 海軍の厠も知りたいですね〔陸軍船艇の便所の解説は載っておりますが陸軍と海軍が違うのか同じなのか等々、興味が湧いてきます〕。