「扶桑型戦艦伊勢型戦艦完全ガイド」イカロス出版を買ってきたので内容と感想を書きたいと思います。

 季刊ミリタリークラシックに掲載された記事を再編集・加筆した1冊であります。題名の通り扶桑型戦艦と伊勢型戦艦で半分ずつとなっています。

 前半が山城型戦艦で「名シーンセレクション」「これがスリガオで伝説となった超ド級戦艦扶桑と山城だ!/上田信絵」「塗装と艦型変遷図」「CG解説扶桑型戦艦メカニズム」「日本海軍戦艦建造史」「扶桑型戦艦の建造・改装の経緯」「扶桑型戦艦の艦隊編成と運用」「艦隊決戦時の戦艦の砲戦術」「甲鉄城の咆哮‐扶桑型戦艦の戦歴」「図説扶桑型戦艦/こがしゅうと」「扶桑型と同世代のライバルとの比較」「扶桑型戦艦関連人物列伝」「扶桑型2隻の艦歴」「扶桑型仮想戦記」「扶桑型戦艦ランダムアクセス」「扶桑型戦艦フォトギャラリー」という内容になっております。

 全部読めば扶桑型の事はほぼ判る内容となっています。ミリタリークラシックでおなじみのCG解説のコーナーが詳しくて良いです。

 

 後半の伊勢型戦艦は「名シーンセレクション」「これが史上空前の航空戦艦姉妹日向と伊勢だ/上田信絵」「戦艦伊勢・日向塗装図集」「CG解説伊勢型戦艦メカニズム」「戦艦伊勢型の建造経緯」「伊勢型航空戦艦その誕生の軌跡」「永遠なる伊勢、日向‐伊勢型の戦歴」「飛行甲板における艦上機の取り扱い」「伊勢型戦艦艦長列伝」「伊勢型航空戦艦イラストレイテッド・連帯改装/こがしゅうと」「伊勢型戦艦の艦長になってみよう」「伊勢型改装案‐俺が考えた伊勢」「架空戦記・第二次マレー沖海戦の凱歌」「ランダムアクセス」「関連年表」「フォトギャラリー」

 伊勢型の方が解説があっさりしております。

 両方の記事を読めば扶桑型・伊勢型の基本についてはしっかり判る1冊となっています。扶桑型についてはかなり詳しいです。

 伊勢型より扶桑型の方が詳しいなんて時代ですよね。昔「丸スペシャル」が発売されていたとき日本海軍艦艇シリーズでバックナンバーが最後まで売れ残ったのが扶桑型だったんですよね・・・艦これのおかげですね。単純に書かれた時期が扶桑型の方が後という説もありますが。

 この本の難点と言えば写真が少ない事ですかね、フォトギャラリーはありますが合計6ページですから。

 写真が見たいという人は「世界の艦船別冊傑作軍艦アーカイブ〔7〕戦艦「扶桑」型/「伊勢」型に多数掲載されています。  

 両方揃えれば扶桑型・伊勢型についてはかなり詳しく理解出来ると思います。 

「未完の計画機‐命をかけて歴史をつくった影の航空機たち」浜田一穂著を読み終わった

「未完の計画機‐命をかけて歴史をつくった影の航空機たち」浜田一穂著/イカロス出版を読み終わりました。 

未完の計画機 (命をかけて歴史をつくった影の航空機たち)

未完の計画機 (命をかけて歴史をつくった影の航空機たち)

  • 作者:浜田 一穂
  • 発売日: 2015/04/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

  出版されたのは2015年でしばらく前ですがやっと読み終わりました。

 この本は雑誌Jウイングに連載されたものをまとめたものの第1巻であります。

 戦後に計画された機体がメインとなっております。

 第1部は「白い未完機」として「ノースアメリカンXB−70ヴァルキリー」「BAC TSR2」「アヴロ・カナダCF−105アロウ」が取り上げられています。XB−70とTSR2については「世界の傑作機」や他の本でも割と取り上げられていますがCF−105の記事は貴重。

 第2部は「アメリカの野心」、ここで注目はやはり「コンヴェアNX−2原子力爆撃機」。戦後アメリカが一番無茶した時代、原子力万能期待時代のあだ花と言える機体ですね。落ちたときの事を考えてないというか・・・発想が無茶ですね。他にはXF10F、XF−103、F−108、X−20が取り上げられています、どれも斬新な発想の機体ですが原子力爆撃機には勝てないですね〔苦笑〕。

 第3部は「奇想の挑戦」、アメリカ以外の計画機の世界です。旧ソ連の「スホーイT−4」「バルティーニVVA−14」、イギリスの「マイルズM.52」「ブリストル188」「ジャンピング・ジープ」、フランスの「ルデュック・ラムジェット実験機」「シュド・ウエスト(SNCASO)トリダン」、ドイツの「VFWフォッカーVAK−191B」が紹介されています。

 「バルティーニVVA−14」はイタリアからソ連に渡った設計者ロベルト・リュドヴィゴヴィッチ・パルティーニの人生が面白いですね、設計した海面効果機も面白いです。

 「ジャンピング・ジープ」に英国のF1チームが絡んでた話も良いです。

 

 計画機、試作機好きには良い本であります。

 2巻と3巻を買わないといけませんね。

「アリエナイ医学事典‐アリエナイ理科別冊」亜留間次郎著をしばらく前に買ってきた

 「アリエナイ医学事典‐アリエナイ理科別冊」亜留間次郎著/三才ブックス刊をしばらく前に買ってきました。 

アリエナイ医学事典

アリエナイ医学事典

  • 作者:亜留間次郎
  • 発売日: 2020/04/03
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 亜留間次郎著としては「アリエナイ理科式世界征服マニュアル」に続いて2冊目であります。

アリエナイ理科式世界征服マニュアル

アリエナイ理科式世界征服マニュアル

 

 薬理凶室といえば実験・工作系の人が多いのですが亜留間次郎さんは文献派の代表選手であり謎の経歴を持つ方であります〔本当に謎が多い人であります〕。

 その亜留間次郎さんが取り上げたテーマは「医学」、亜留間次郎さんの専門分野の一つであります。

 「Topics」「闇の医学史」「裏基礎医学」「世界の奇病・難病」「補講」の5つに分類して1項目2〜6ページでまとめられています。どこから読んでも問題なしです。

 取り上げられているテーマは興味深いものばかりです。一番最初が「ブルーベリーが目に効く説はイギリス軍のデマが元だった!?」次が「コーラを飲むと骨が溶ける説って実際はどうなの?」と畳みかけてきます。

 雑誌等連載時に話題になった「強制射精の世界」「前立腺マッサージの世界」「大正時代の性教育論」「世界の狂った処女厨達」「断面描写の真実」「キ◎タマ解剖学講座」などのテーマだけじゃないのです。

 「ガソリンの危険性」「チェーンソーの殺傷力」「麻薬と密輸の科学」「合法的な闇病院」「ドーピングの光と影」「臓器売買の最新事情」といった闇の医学問題も豊富。

 「5000人の未熟児を救った男」「天才インスリン研究者・服屋三郎」「海賊王と呼ばれた男達」はとっても良い話〔ドラマ化できそうな話も〕。

 「モーリタニア物語」「永世中立国スイスの船を守るのは海運王の私設軍隊」「ハンター財閥による障害者自立支援施設キャプスタン」も興味深い。

 とにかく知的好奇心を全方位から刺激しまくる記事が満載の1冊となっております。

 本当に面白いです。

 

「日本エロ本全史」安田理央を読み終わった

 「日本エロ本全史」安田理央著/太田出版を読み終わったので感想を書きます。

 

日本エロ本全史

日本エロ本全史

  • 作者:安田 理央
  • 発売日: 2019/07/02
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 1964年から2018年までに創刊された100冊のエロ本をオールカラーで紹介した大著であります。

 戦後〔1946年創刊〕最初に創刊されたのが「りべらる」、2018年に創刊されたのが「FANZA」であります。

 戦後すぐに創刊されたのが俗に言う「カストリ雑誌」であります〔カストリの語源に関しては諸説あり〕。60年代になると「平凡パンチ」や「週刊プレイボーイ」が発売、70年代以降、多くのエロ本が創刊され休刊、廃刊となっていきます。

 特に2000年以降のインターネット普及と数々の出版規制〔今も続く〕がエロ本を衰退させていきます。

 その間がエロ本の全盛期、私もお世話になった本がありますし今回初めて知った本もあります・・・これに載ってない本も多数あると言うので凄いですね。

 大変貴重な文化資料です。

 私はこういう大量に情報が積み込まれた本が大好きです。

 面白かった。 

「英国軍艦勇者列伝」岡部いさく著を読み終わった

 「英国軍艦勇者列伝」岡部いさく著/大日本絵画刊を読み終わりましたので感想を書きます。 

英国軍艦勇者列伝

英国軍艦勇者列伝

 

  最近、偶然にも英国軍艦本を読んでいます。この本は2012年出版になります、偶然にも古書店で見つけたので購入した本であります。

 この本は艦船模型雑誌『NAVY YARD』に連載されている「なんだか蛇の目のフネだから」の連載をまとめた本です〔現在も連載継続中〕。

 日本で人気と言えば日本の軍艦〔自国ですから〕にアメリカ軍艦そしてドイツ軍艦でしょうか、イギリス軍艦の人気は今ひとつ〔失礼〕でした。最近では色々な本が出たりアオシマから1/700キットが色々発売されるなど徐々に盛り上がってきております。

 本書で取り上げられているのは「巡洋戦艦インヴィンシブル」「E級駆逐艦」「アーチャー級護衛空母」「ダイドー級軽巡洋艦」「J〜K級駆逐艦」「C級軽巡洋艦」「V〜W級駆逐艦」「U級潜水艦」「トライバル級駆逐艦」「ロイアル・ソヴァレン級戦艦」「アブデエル級敷設巡洋艦」「リアンダー級フリゲイト」「巡洋戦艦タイガー」であります。

 最初が「巡洋戦艦インヴィンシブル」、英国軍艦の艦名の意味から入ります。英国軍艦の名前は他の国の軍艦と違って形容詞が艦名になっていることが多々あります。日本ではありませんよね・・・日本の場合、他国のように人命を艦の名前に付ける事も無いですね。そこから始まって艦の解説と履歴の説明、もちろん岡部いさくさんの本ではお約束のイラスト解説もあります。

 他の艦についても同様の解説ですね・・・トライバル級駆逐艦などは艦の数も多いので連載4回分になっています。

 とにかく読みやすいし蘊蓄たっぷりだし、いつもの良い意味での「岡部いさく本」ですね。出来れば写真が少し付いていれば文句なしなんですけど。

 第2巻発売希望です。

 今度は新刊で買おう。

「世にも危険な医療の世界史」を読み終わった

 「世にも危険な医療の世界史」リディア・ケイン、ネイト・ピーダーセン著/福井久美子訳/文藝春秋社刊を読み終わりましたので感想を書きます。

 

世にも危険な医療の世界史
 

  買って1年ほどたつのですが新型コロナウイルスが流行している時期に読む事になってしまいました〔買った順番に読んでいます・・・ストックが1年分ぐらいあります〕。

 ある意味、恐ろしい本です。

 人間の負の歴史ですね、前向きな言い方をすれば試行錯誤の歴史です〔犠牲は多かった〕。

 本文は使われた物質や装置などを大きく5つに分けられています。「元素」「植物と土」「器具」「動物」「神秘的な力」、それに追加して「トンデモ医療」のコラムが6編掲載されています。

 「元素」では水銀・アンチモンヒ素・金・ラジウムラドン〔金以外は怪しさが漂いますね〕。

 「植物と土」ではアヘン、ストリキニーネ、タバコ、コカイン、アルコール、土〔中毒性が高い物多し〕。

 「器具」では瀉血ロボトミー、焼灼法、浣腸、水治療法、外科手術、麻酔〔瀉血ロボトミー、焼灼法が怖すぎます〕。

 「動物」ではヒル、食人、動物の身体、セックス、断食〔使い方によっては・・・〕。

 「神秘的な力」では電気、動物磁気、光、ラジオニクス、ローヤルタッチ〔オカルト成分多し〕。

 「トンデモ医療」では女性の健康法、解毒剤、男性の健康法、ダイエット、目の健康法、癌治療についてのコラムです。

 読んでるとどれもこれも危険な医療なのですが・・・真剣に治療をしようとして試行錯誤している物と一儲けしようと企む悪い物の両方があります。常識で考えても悪そうな瀉血モーツアルトは2リットル抜かれて病状悪化→死亡〕も真面目に信頼されていた時代があります。

 「危険な医療の歴史」は医学の歴史の一部なのです。ここを避けて通る訳にはいかないのですね。

 そんな難しい事を考えなくても読むと色々な歴史の事実やエピソードを知る事が出来る一冊です〔アジアの医学についてはほとんど載っていないのは少し残念〕。

 

 現在、世界は新型コロナウイルスで大変な事になっています。

 私も会社から自宅待機を命じられて出勤したりしなかったりの日々です〔工場で物作りをしている人間なので自宅勤務は出来ません、装置を触らないと仕事になりませんからね〕。

 まだ治療法が確立していない新型コロナウイルス、何十年かして振り返れば「あの時、こんな変な治療法してたんだよ」と言われる事になるかも知れません、それを知るためには生き残るしかないのですね。

 いまでも、トンデモ治療法のデマが流れる事があります。少し前にHIVが流行りだしたときに「肛門に直射日光を当てれば治る」というのがあったんですが〔確か1980〜90年代だった・・・記事が見つけられなかった〕最近になってまた出てきています。

www.gohongi-clinic.com

 この場合、害は無さそうなんですが効果もありません。害のないトンデモ医療なら良いのですが現実には害のあるトンデモ医療が流布される事があります・・・気をつけましょう。

「きよのさんと歩く大江戸道中記」金森敦子を読み終わった

 「きよのさんと歩く大江戸道中記‐日光・江戸・伊勢・京都・新潟……六百里」金森敦子著/ちくま文庫を読み終わりました。

 

  江戸時代後半の旅行記です。

 鶴岡に住む裕福な商家の内儀・三井清野が日光・江戸・伊勢・京都・新潟と総距離600里、現在の単位だと2420kmを108日かけて旅行した記録であります。

 この本の解説を書かれている石川英輔さんが自著でよく紹介されている本なので一度読んでみようと思っていたのですが本屋でなかなか見つからず大阪の巨大書店で見つけて購入した本です〔中身を見ずに買いたいと思うほどでもなかったのも現実〕。

 裕福な商家の内儀の清野さんが旅に出たのは31歳、長女も14歳になって長男の子育ても一段落、夫である四郎兵衛にも勧められ旅立ちます〔夫も124日間、647里の旅行をしています〕。

 江戸時代もこの頃になると多くの女性も旅に出ます、でも女性一人では色々と問題があるので武吉という信頼の置ける男性、そして八郎治という荷物持ちを連れての旅です。

 この旅日記の特徴は紀行文では無く記録分と言う事、道中で見た事、あった事を率直に書いていきます。女性ならでは観察眼も働いています〔飯盛女の衣装や一般女性の髷の形など〕。

 

  さて江戸の旅での問題点と言えば「関所」であります。

 「入り鉄炮に出女」と言って関所を通る時に女性は関所手形を用意した上で細かく調べられるというのがお約束〔規則〕ですが清野さんは関所手形無しで旅をします・・・旅が出来ました。江戸も後期になると町人・百姓身分の女性が手形無しで旅をしています〔武家の女性はちゃんと手形を用意したようです〕。手形無しでの関所通過方法、すなわち「関所抜け」です。この事について清野さんの旅日記には細かく書かれています〔他の旅日記にはあまり書かれてないようです〕、これだけでも貴重ですね。江戸の法令は文面だけ見ると厳しい物が多いのですが「三日法度」と言われてあまり守られていなかったのも事実です〔だから同じ法度が何度も出された〕。

 

 次のこの日記の特徴は旅日記とともに出納帳も付いています〔出納帳の内容は全て載っていません〕、清野さん買い物しまくってます、豪快です、自分のためや周りの人のために買いまくってます。食べ物も贅沢していて良い物は日記に細かい内容が書かれています。江戸では芝居も見ています。他にも色々・・・当時の贅沢な旅というのが日記で判ります、これは大変貴重。

 

 流麗な文章で書かれた紀行文でないぶん、朗らかで自分の興味のある事をとにかく書き綴った旅日記は当時の旅や生活を知るための大変良い文章になっています。

 その旅日記を細かく解説し他の旅日記や残された文章と照らし合わせながらわかりやすく解説したこの本は大変良い本だと思います。

 面白かったです。